ネット広告のジレンマ

かのタカヒロさんのブログより、

ネット広告代理店(の特に営業さんたち)が、コンバージョン(とかCPA)至上主義になってしまうのは、結局のところ、

「ネット上にゴール(しかも資料請求とか購入とか)が設定されたキャンペーン」

しか、できない思考になってんだな。

http://www.mediologic.com/weblog/mt-tb.cgi/1878


かなり潔く断定された発言ではあるが、恐らくネット広告代理店という立場に身を置いている人からは、かなりの反論もあろう。


それは、以下のネット広告代理店の抱える二つのジレンマから。



勿論、タカヒロさんの仰る通り、ネット広告代理店の営業担当者は、Yahoo!Mixiのような売れ筋と言われる広告メニューや、媒体社の出す直割と言われる配信までの期限ギリギリで値引いた広告メニューをいわゆるプランニングシート(と言えば聞こえはいいが、単にexcelで枠をリスト化した見積書)に乗っけて”CPCは\〜です!”、”想定CPAは\〜です!”と、単なる媒体の枠売り営業になってしまう人は多い。


また悪いことにそういった営業で運よく数字が積み上がろうものなら、”デキる営業マン”、”ネット広告のプロフェッショナル”と社内で崇められて若く出世していく。ネット広告代理店は、いわゆる『営業会社』というヤツなので、とりあえず評価としては、受注金額、売上金額が一番のポイントとなる。そういった環境で育った人がマネージャーとなって新人を育てようものなら、新人も同じような営業スタイルをとるし、それがベストだと思ってしまう。これを続けていると長期的には値引き合戦に突入させられてマージン商売の代理店はどんどん疲弊していく。そんな中、本当のプランニング力を持っている人は、『勘違い野郎』として白い目で見られてしまうのが常。


これが一つのネット広告代理店の内部環境的なジレンマ。


で、次に広告主。

ネット代理店の担当者が、ターゲットインサイト、外部環境、プロモーション戦略、と様々なマーケティングの用語を並び立て、PPTを駆使し、この提案がどれだけ広告主のビジネスに貢献するのかを力説、その内容に対して広告主から一言、


”で、ごたくはいいから、結局幾らで獲れんの?”


一蹴。


この質問を受けた後、担当者としては最終的に上述の『プランニングシート』を提出する。


これが、外部環境的なジレンマ。


要するに、ネット広告のCPA至上主義というのは、ネット広告代理店の担当者がその提案しかできないからという端的な理由からではなく、それを求める広告主側の問題もあるということ。


そこで一般的に反論として言われるのが、その主義を変えさせてこそ広告代理店、ということ。だが、広告主側の担当者が、CPA\〜、で獲得できなければ自分の評価が下がってしまうという状態のときに、マーケティングがどうたらこうたらとか、プロモーションがどうたらこうたら、とかいう話は全く通用しない。とりあえず獲れればいいのだから。


ネット広告代理店の人もたぶん面白い企画をやりたいとは思っているんですよ、当たり前に。

新入社員なんて目をキラキラさせてますもん。creativeという言葉に憧れて。。。


でもそれをなかなかさせてくれない、できない現実が待ってます。

別に私はネット広告代理店で働いているわけではない(経験はある)んだけど、業界に身を置きながら、現在のネット広告を取り囲む環境は更に上記のジレンマあるいはスパイラルがどんどんスピードアップしているなぁ、と常々感じる。そんな中、誤解を恐れずに言うと、ネット広告を取り扱わせて全く何もできないのは総合代理店出身者であるということ。理由はシンプルで、語るのが好きで現実をなかなか見ない理想論者が多いから。takahiroさんは違うとは思いますが。(本心)


ネット広告をその頭の部分で抑えているメディアレップという存在自体が枠売りの帝王のようなもので、彼らにはプランニングや企画なんていう言葉は存在しない。ただ横から横へ枠を流しているだけなんだから。まぁ、それも2大レップの親会社が親会社ですからね。

とどのつまり、ネット広告代理店がCPA至上主義に陥りながらも業界を引っ張るように売上を上げているのは逆に評価すべきだと思う。このままでいいか、と言われたら勿論、NOだけどね。この業界、総合代理店と言われる人達がやっていたら恐らくとうの昔に無くなってるよ。


こう書きながらも、なかなかネット広告業界はうだつが上がらないなぁ、と自分自身再確認しました。